#11 走り続けるブルースマン伝説 “エリック・クラプトン①~来日公演編”
来日中のEric Clapton(エリック・クラプトン)の特集を3回連続でお届けしようと思います。第一回は“エリック・クラプトン~来日公演編”です。
エリック・クラプトンが17度目の来日公演中である。今回の来日はうかつにも直前で知ってしまったので、先行予約はすでに終わっていた。それでもこれが最後の来日かもしれないと思い(まあ、いつもそういう噂が流れるのだが)、11月14日の大阪城ホール公演のチケットを購入。スタンド席の中間あたりの席なので、最悪ではないもののそれほどよいとはいえない。これはオペラグラスが必要だと判断。当日、梅田のヨドバシカメラで倍率8倍のオペラグラスを購入、会場である大阪城ホールへと向かう。
好きなアーチストのコンサートに行くとき、私はお気に入りのおもちゃを与えられた子供のように上機嫌である。睡眠不足で体調は最悪だったが、こうなるとまったく関係がない。気分は上々である。以前いた会社の同僚でやはりクラプトン好きの滝川〝コカイン〟クリステル氏とJR京橋駅で落ちあう。滝川〝コカイン〟クリステル氏は美人なのだが、その端正な顔だちとは裏腹にかなりのロック通でもある。現在は歯科医夫人である彼女だが、酒とコカインにまみれた暮らしをしているそうだ。そう、一時期のクラプトンのように。嘘です。ご主人に献身的な良妻ぶりを発揮しているようだ。残念ながら私とはただのロック友だちである。腹ごしらえをしてから会場に到着。いよいよ開演である。(※ ここだけの話、私は知人・友人にひそかにニックネームをつけては、一人で喜ぶ癖のある変態である。そして、ありもしない作り話をするのも大好きなのだ。)
ステージにクラプトンとそのバンドが颯爽と登場。じつはトイレに行っていて登場のシーンを見逃したので、ここは想像で語っている。ふむ。一曲目の“Pretending”が始まり、早くも絶頂をむかえそうな黒船であった。クラプトンが心底好きなのだと改めて思い知らされる。クラプトンの奏でる音に浸っていると、なんとも心地のいい時間が流れるのだ。この感覚はやはりライヴでないと味わえない。私自身これが三度目のクラプトン公演だが、何度聴いても最高だ。
過去の公演とはバンド編成が大きく変わっていたが、まったく見劣りのしないメンバーだった。ブルージーでグルーヴ感があり、シンプルなバンドらしいバンドという印象だ。クラプトンは原点であるブルース少年だった頃に回帰していこうとしているのかもしれない。ドラマーのSteve Gadd(スティーヴ・ガッド)とベーシストのNathan East(ネイザン・イースト)がいないのは残念だったが、こちらも強力なメンバーだ。
ツアー・メンバー・リストがウドー音楽事務所のHPに出ていたが、クラプトンにうるさいファンも納得の達者な面々だ。スライド奏法の名手Derek Trucks(デレク・トラックス)、サウスポーのDoyle Bramhall II(ドイル・ブラムホールⅡ)とのトリプル・ギター。Derek Trucksはまだ27歳だそうだが、いいギターを弾くよね。ベースがWillie Weeks(ウイリー・ウィークス)で、ドラムスはSteve Jordan(スティーヴ・ジョーダン)。ともに大物ミュージシャンとの共演を積んできた百戦錬磨のリズム・セクションだ。キーボードはいつものChris Stainton(クリス・ステイントン)に加えてTim Carmon(ティム・カーモン)のツイン・キーボード。そして、女性コーラスがMichelle John(ミッシェル・ジョン)とSharron White(シャロン・ホワイト)。このコーラスがよかった。しびれてしまったよ。本物のコーラスはなかなか生では聴けないからね。
この日演奏された曲目は、ウドー音楽事務所が発表した公演初日のセット・リストとは若干違っていたようだ。初日のセット・リストが発表されたのは知っていたが、楽しみがなくなるのであえて見ないでおいたのだ。そして今、そのセット・リストを見ているというわけだが、おいおい初日は“I Shot the Sheriff”をやっていたのか。うーん。これを聴けなかったのはかなり悔しいが仕方ない。
コンサートの序盤、“Pretending”、“Old Love”などスロー&ミディアム・テンポな曲で渋く聴かせるクラプトンに、大満足の黒船であった。中盤に入り、まさかの“Motherless Children”。この瞬間、背筋に電気が走り、嬉しさのあまり私は涙さえ浮かべていた。泣くような曲じゃないのに。この日いちばん感動した場面だ。思えばクラプトンとの出会いは、10代のとある夏の日のことだった。友人の〝スローハンド〟米野氏から、「これええから、聴いてみろよ。貸したるわ。」と手渡されたのが『461 Ocean Boulevard(461オーシャン・ブルーヴァード)』だった。〝スローハンド〟米野氏のいう通り、それは素晴らしいアルバムだった。何度聴いたかわからないし、いまでもたまに聴いている。『461 Ocean Boulevard』に収録されている曲には特に思い入れがあるのだ。だから、“I Shot the Sheriff”が聴けなかったのは残念でならない。当時は、Yvonne Elliman(イヴォンヌ・エリマン)がコーラスをやっていたね。
“Motherless Children”に続いては、クラプトンひとりでの弾き語りで“Driftin'”。おお。これは小さなライヴ・ハウスで聴きたかったな。カッコよすぎて、涙がこぼれ落ちるのをかろうじてこらえた。買ったばかりのオペラグラスで、クラプトンの弾き語りをとくと観ることができた。オペラグラス、大活躍である。“Driftin'”は初日はやらなかったようだ。ヒヒ。
終盤は、お馴染みの名曲が続く。滝川〝コカイン〟クリステル氏が大好きだという “Wonderful Tonight”。さらにはトリプル・ギターがいきる“Layla”、“Cocaine”。もちろん、大感激の黒船だ。時計を見ると二時間が過ぎていた。あっという間だった。充実した時間というのは早く流れるものだ。そして、アンコールは“Crossroads”。これが最後の曲となった。うーん、もう終演なのか。アンコールをせめてもう一曲やってほしかったというのが正直な感想だった。ブルース色の強いこのメンバーの“Sunshine Of Your Love”をぜひ聴きたかったが、“Cocaine”をやってくれたからよしとしよう。それにDerek & The Dominos(デレク・アンド・ザ・ドミノス)の曲も多かったことだし。
全体を通して感じたことは、滝川〝コカイン〟クリステル氏もいっていたが、クラプトンの肩の力の抜けた演奏だ。本来の音楽の形である、好きな音楽を演奏し楽しむという感じといえばいいのかな。クラプトンはいつもより気持ちよさそうに歌い、ギターを弾いているように見えた。そして、自分の息子のような20代・30代の二人のギタリストには好きなように弾かせ、自分の仕事もきっちりこなすという余裕までみせた。それも音楽に関してはすべてを手に入れた男だからできることなのだろう。
61歳のクラプトンの波瀾万丈でありながら輝かしいキャリアは最終章に向かっている。同年代の大物ロック・スターたちの大半が隠居同然なのに、クラプトンは歩くことをやめない。いや、走り続けているといったほうが正確かもしれない。しかも、それが私の人生だからねといわんばかりに、不思議なほど自然体である。無理している感じがまるでない。心の底から音楽を愛しているのだろう。
クラプトンの最終章のテーマはおそらく、自分が演奏して気持ちのいい音楽に違いない。さきほど少し触れたように、少年の頃に親しんだブルースなんかもそうだろう。1970年代に触れたアメリカ南部のルーツ音楽もそうかもしれない。誰からの制約も受けずに、心のまま自然にポンと思いついた音楽をやり続けるのではないかと私は思っている。そして、聴くものにとっても心地のいい音楽がそこにはあるはずだ。
今回は来日公演中ということで、クラプトンの代表的なライヴ・アルバムを二枚ご紹介します。1990年末から1991年初頭にかけてのロンドン公演の模様を収録した『24 Nights』と、2001年のワールド・ツアーのライヴ盤である『One More Car One More Rider』だ。後者はSteve Gadd、Nathan Eastの強力リズム・セクションが参加している。どちらも聴きごたえ十分のライヴ盤だが、今回のツアーのライヴ・アルバムもぜひとも出してほしいものだ。そして、そこに“I Shot the Sheriff”が収録されていることを願うばかりだ。
次回は、“エリック・クラプトン~バンド編”をお届けします。
エリック・クラプトンの “Motherless Children”は、こちらからご覧になれます。
Motherless Children(Eric Clapton)の動画
エリック・クラプトンの “I Shot the Sheriff”は、こちらからご覧になれます。
I Shot the Sheriff(Eric Clapton)の動画
エリック・クラプトンの “Layla”は、こちらからご覧になれます。
エリック・クラプトンの “Cocaine”は、こちらからご覧になれます。
エリック・クラプトンの “Wonderful Tonight”は、こちらからご覧になれます。
※ Eric Clapton with Dire Straitsでどうぞ。
Wonderful Tonight(Eric Clapton)の動画
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One More Car, One More Rider アーティスト:Eric Clapton |
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