#13 走り続けるブルースマン伝説 “エリック・クラプトン③~ソロ編”
1971年にDerek & the Dominos(デレク・アンド・ザ・ドミノス)が解散した後、Eric Clapton(エリック・クラプトン)は再起不能説がささやかれるほどのヘロイン中毒に陥る。それでもThe Who(ザ・フー)のPete Townshend(ピート・タウンゼンド)らの手助けもあって、しだいに肉体的にも精神的にも健康を取り戻し、再起のアルバムを発表する。
1974年発表の『461 Ocean Boulevard(461オーシャン・ブルーヴァード)』だ。友人の〝スローハンド〟米野氏がおしえてくれた、私の大好きなアルバムである。今回の来日公演で披露してくれた“Motherless Children”をはじめ、“I Shot The Sherriff”、“Let It Grow”などを収録。“Let It Grow”はとても美しいバラードである。『461 Ocean Boulevard』は、シングル・カットされたBob Marley(ボブ・マーレィ)のカヴァー曲である“I Shot The Sherriff”とともに全米チャート1位を獲得した。レゲエを取り上げたという意味でも、レゲエの存在を世界に知らしめたという意味でも重要なアルバムといえるだろう。
1977年、『Slowhand(スローハンド)』を発表。“Cocaine”、“Wonderfull Tonight”、“Lay Down Sally”などを収録。1979年、George Harrison(ジョージ・ハリスン)の妻であったPatti Boyd(パティ・ボイド)と長年の想いを遂げて結婚。クラプトンの“Layla”と“Wonderfull Tonight”、そしてジョージの書いた“Something”。これらの名曲はみなパティへの想いから生まれた曲だといわれている。しかし、1986年にはパティと離婚。クラプトンとジョージは、2001年にジョージが病死するまでずっと親友であり続けた。追悼コンサートの『Concert For George』は、クラプトンの企画によって行われたものだ。
1980年代に入り4枚のアルバムを発表した後、1989年に『Journeyman(ジャーニーマン)』を発表。収録曲は、“Pretending”、“Bad Love”、“Running On Faith”、“Old Love”、“Before You Accuse Me”などで、派手さはないが充実した内容となっている。
1991年、イタリア人女優ロリ・デル・サントとの間に生まれた4歳の息子コナーを高層アパートメントからの転落事故により失う。亡き息子に捧げた優しくもせつない曲が“Tears In Heaven”である。1992年に発表したアコースティック・ライヴ・アルバム『Unplugged(アンプラグド)』がヒットし、ロング・セラーとなる。これに触発されてかどうかわからないが、大物ミュージシャンによるアンプラグド・アルバムが次々と発表される。1993年にはグラミー賞の6部門受賞をはたし、新たな偉業を達成する。1994年、ブルースのカヴァー集である『From The Cradle(フロム・ザ・クレイドル)』をリリース。1996年には映画『フェノミナン』の主題歌でもある“Change The World”を発表し、グラミー賞のソング・オブ・ジ・イヤーを獲得。クラプトンはこの90年代に、ブルース・ファンやロック・ファン以外のファン層からも幅広く支持されるようになる。円熟味を増したクラプトンが、ソフトな楽曲でも十分に魅力的なところを見せたといえるだろう。
2001年、いまは亡き叔父のエイドリアン・クラプトンとその妻に捧げたという『Reptile(リプタイル)』を発表。肩の力の抜けた心地よいアルバムである。タイトル曲の“Reptile”やStevie Wonder(スティーヴィー・ワンダー)の“I Ain't Gonna Stand For It”のカヴァーなどが収録されている。
コラボ・アルバムでは、2001年の『Riding With The King(ライド・ウィズ・ザ・キング)』で〝ブルースの巨人〟と呼ばれるB.B.King(B.B.キング)と共演。私はこのアルバム・ジャケットが好きだ。オープン・カーの後部座席に堂々と座るB.B.キングと片手で運転するクラプトンのツーショット。ともに正装でサングラスをかけ笑っている。なんとも愉快ではないか。2006年には、“Cocaine”の作者でもあるJ.J.Cale(J.J.ケイル)との共作『The Road To Escondido(ザ・ロード・トゥ・エスコンディード)』を発表。ここにきて、これらの大物ふたりとの共演をはたしたエリック・クラプトン。それはまるで自分の歩んできた道を確かめているかのようでもある。
クラプトンの残した軌跡をざっと振り返ってみた。私もすべてを聴いているわけではないので、重要なアルバムが抜け落ちているかもしれない。ただいえることはクラプトンはやはりブルースマンなのだなということだ。それも極めて柔軟で、いいものならなんでも受け入れる懐の深さをもったブルースマンだ。その証拠に共演したあるいは交流のあったミュージシャンの多さがあげられる。クラプトンはギター一本さえあればどこへでも出かけていくのだ。
さきほどのB.B.King(B.B.キング)、J.J.Cale(J.J.ケイル)のほかに親交のあったまたは共演したミュージシャンは、Chuck Berry(チャック・ベリー)、Dr.John(ドクター・ジョン)、Bob Marley(ボブ・マーレィ)、Jimi Hendrix(ジミ・ヘンドリックス)、The Rolling Stones(ローリング・ストーンズ)、The Beatles(ビートルズ)とその面々、とくにGeorge Harrison(ジョージ・ハリスン)、Pete Townshend(ピート・タウンゼンド)、Bob Dylan(ボブ・ディラン)、Elton John(エルトン・ジョン)、Phil Collins(フィル・コリンズ)、Santana(サンタナ)、Dire Straits(ダイアー・ストレイツ)とリーダーのMark Knopfler(マーク・ノップラー)、Cheryl Crow(シェリル・クロウ)、Lenny Kravitz(レニー・クラビッツ)など数えあげたらきりがない。
ミュージシャン仲間から尊敬され慕われる人間クラプトンの魅力を垣間見ることができるというものだ。オープンで常に普段着の偉ぶらない性格なのだろう。若手ミュージシャンとの共演も多く、今回のツアーで素晴らしいスライド・ギターをみせてくれたDerek Trucks(デレク・トラックス)もクラプトンが熱心に誘ったそうだ。そして、そんなナイス・ガイが女性にもてないわけがないことも付け加えておこう。
エリック・クラプトンへの高い評価は、そもそもがギタリストとしてである。確かにクラプトンのギターから生まれるフレーズは半端じゃなく素晴らしい。なにしろプロのギタリストも憧れる存在なのだ。しかし、ヴォーカリストとして、ライターとしての評価がもっとあってもいいと私は思うのだ。これまでに残してきた名曲はハードなものからメロウなものまでさまざまで、クラプトンが歌うからこそさまになる楽曲というのも多い。人生の苦渋をなめてきた男だからにじみでる心の温かさが、曲や演奏にあらわれているのも大きな特徴といえるだろう。クラプトンの曲を聴いていると心地よさを感じるのはそのせいかもしれない。特集を組んでみて改めてそんな思いを強くした黒船である。そして、このブルースマン伝説の続きをまだ見ていたいと心からそう思う。
エリック・クラプトンの “Old Love”は、こちらからご覧になれます。
エリック・クラプトンの “Tears In Heaven”は、こちらからご覧になれます。
Tears In Heaven(Eric Clapton)の動画
エリック・クラプトンの “Change The World”は、こちらからご覧になれます。
Change The World(Eric Clapton)の動画
エリック・クラプトンの “Blue Eyes Blue”は、こちらからご覧になれます。
Blue Eyes Blue(Eric Clapton)の動画
ビートルズの“Something”は、こちらからご覧になれます。 ※ うわさのPatti Boyd(パティ・ボイド)の姿が・・・・。 ※ 2008年06月11日追記(動画追加) エリック・クラプトンの “I Ain't Gonna Stand For It”は、こちらからご覧になれます。
★ 本日の L-O-V-E ★
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